プラシーボでもいいんです。
ついに総合病院を受診した。
かかりつけ、というわけでもないのだが、以前大病したときにお世話になった医師が勤務している。
木曜の朝一番であれば、検査ができるから、来いとのこと。
そうして、普段の出勤時間よりも早くも息も絶え絶えの身体を引きずって行ってきましたよ総合病院。
そこで採血・採尿、レントゲン検査を受けた。
平日の朝だというのに採血・採尿の受付には長蛇の列ができていて、
「朝一番に済ませてしまおう」という真面目な考えのお年寄りは、こういうところで偶然集ってしまうようだ。
だから、医療事務のお姉さんは工場のベルトコンベヤーのように、彼らを右へ左へと仕訳けていくわけだけれど
一人、ド派手な(楳図かずおのような)ロングTシャツを着たガリガリの男性が
「金払えば銀座だって六本木だってもっと丁寧な対応をしますよ!」と、おそらくは今受けたであろう流れ作業の仕打ちに対して声を荒げていたのだろうが、医療費は疾病に合わせて点数で決まってるから、払いたくても払えねえんだよ。
金積んで丁寧な対応が受けたいんだったら、銀座のクラブのママに甘えてこいよ。
というか、病院を銀座や六本木と比較してしまうところが、既に老の害というか。
今日もまた、「ああはならないようにしよう」と思えるお手本様を一人見つけることができて、ためになったなあと思います。
もっと時間がかかるものかと思ったが、検査についてはつつがなくするすると進み、
覚えていることと言えば、レントゲン検査技師の男性が若く、とても爽やかで、わたしがキョドついたことくらいか。
朝だからか血圧はいつも以上に低く、最高血圧90、最低血圧53、脈拍数76だって。
そのうち動きがスローモーションになったりしない? ほんとに大丈夫?
最後に、待ちにまった検査結果の診断ですよ。
頼むよ医師。
かなり詳しく、そしてとても楽しそうに説明してくれたのだが、あまりにも情報量が多く半分くらいはわたしの頭の上をかすって室内に逃げてしまったので、かいつまんでまとめる。
1週間微熱があったというが、まず、人間の対応は一日のうちで1度ほど変化をする。日動変化だ。だから、朝起きたときが36.5度で夕方(もっとも活動するとき)が37.5度であってもあまり不思議はない。
数値を見ると、白血球の数値は上がっていない。だから、細菌性の病気と病気ではない。ただし、体内の炎症はある。そして、肝機能の数値が少し若干上がっている。
可能性としては、ウイルス性の感染症をもらって、つまり、一般的に言うと風邪ですね、それが、免疫力が弱っているがために長引いていて、治癒するために基礎体温をずっと上げている。その場合、そろそろ一週間が経過するので、治まってくるはず。
もう一つの可能性は肝炎。肝機能の数値が上がっているので、ここからぐぐぐと悪くなると、疲労性の肝炎の発症となる。これは危険。
結論から言って、可能性として一番強いのは長引く夏風邪で、長引いてしまっているのはわたし自身の体が弱っているからにほかならない、と、そういうことらしい。
一応、肝炎はまだ疑わしいので、来週の同じ時間にもう一度血液検査をして、疑いを払拭することになっている。
総合病院では処方箋も出なかった。
「免疫力で倒すものなので、初期症状ならともかく、今薬を飲んでもあまり意味がありません」
とのことである。
出かける前は37.3度だった体温も、医師の前では36.5度に落ち着いてしまっていた。
まさにドンピシャ平熱である。
医師、病院、解熱剤なんかよりずっと効くんじゃないだろうか。
「何が起きても大丈夫な場所」に来て、
「大きな問題はありませんよ」と言われて、
悪かった症状がずずいと軽快してしまうのである。
プラシーボ人間ここに爆誕せしといった風情だ。
肝炎の可能性はまだ捨てきれないが、二日経ってこれを書いている今も、
ひどい倦怠感で動けないといったことはまだないので、
おそらくこちらの心配も杞憂なのではないだろうかと思う。
検査の次の日は在宅で勤務をした。
手が付かなかった資料作りが一日で終わった。
本当に「不安」というものは、人の活動のいろいろなところに影響を及ぼす。
でも、もう、なんとなくわかってはいたのだ。
微熱、倦怠感、筋肉痛、これらの体調不良の原因は、ボロボロの生活習慣でああると。
自分の体の体温を管理することができなくなったため、周囲の気温に合わせて、ぐんぐん熱が上がってしまい、ほてりやめまいを覚えていたんじゃないかと思う。
氷嚢や冷却ジェルパック必死に冷やしたりしていたんだけど、まあ、それも一手。
その根っこにあるのは、不眠症だ。
僕は今後こいつの「お前悪い奴だ!」感を増し増しにしていこうと思う。
だから、生活習慣を整えることに注力する。
そして日頃の免疫力を上げること目指す。
もともと単純な人間なので、思いつくことはひととおりやってみた。
毎日がぶがぶ飲んでいるコーヒーをカフェインレスにしてみる。
タバコを、やめる。
軽い運動をする。
寝る前の三時間前に湯船に浸かる。
寝る前一時間は電子機器を見ない。
寝室は涼しくする。
寝室の明かりは暗めにしておく。
自分でも知っているし、調べて有用と書かれていたものについては、上記したぶんは網羅して、いつもより三時間早く布団に入った。
睡眠薬も飲んだ。ばっちりだ。
うん、全然寝れねえ。
おもしろいくらいに寝れねえ。
なんなら昨日観たホラー映画のドッキリビックリシーンばかり脳内再生されるほどに。
結局、普段の睡眠薬の量の二倍の薬を飲んで、強制的にシャットダウンした形になったのだけど、こんな薬の使い方してたら、すぐに手持ちの睡眠薬が足りなくなる。
内科の先生にはもともと相談して、お薬だけもらっていたけど、不眠症単体でお医者さんにかかったほうがいいのかもしれないなあ。
3時間しか寝れないときの翌日なんて、もう、何かを考える余力は残っていないのだもの。
で、木、金と(ドーピングあり)でがっつり寝たわたしは、すごく、元気! なのである。
微熱がない。頭痛がない。筋肉痛がない。倦怠感がない。
素晴らしい! これが「健康」というものか!!
もともとが無関心すぎたのだから、年齢に応じて「健康オタク」といった方向に、宗旨変えを行ってもいいくらいなのかもしれない。
微熱がない体は素晴らしいし、
頭痛も筋肉痛も倦怠感も、ここ一週間ずっと感じていた。
それがなくなるって、すっごい楽。
イメージとしては、収監された囚人の拘束帯が解除された瞬間のような。
孫悟空が手足につけた重りを外したときのような。
大げさだけでもないと思う。一週間続いていた不調が取れるというのは。
楽だ。体が軽い。動きやすい。
そんなわけで、長患いから一転、健康であることのありがたみをひしひしと感じる今日なのである。
そう、この病中でタバコを吸い始め、病後タバコをやめたのだ。
タイミングから考えて主犯こいつなんじゃねえかとも思うのだが、それはまた別のところで。