遠浅の海、羊の群れ。

羊の群れは、きまって遠くの向こう岸で、べえやべえやとわなないている。

猫に小判、豚に真珠、私にsampleTank、それはまるで積ん読

それこそ、十代の頃からの趣味なのだが、DTMをやっている。

DIYではない、DTMだ。

デスクトップミュージック、略してDTM。実生活ではまるで役に立たない言葉なので今すぐ忘れてもらって構わない。

ちなみにDIYはDo It Yourself(自分でやる)の略だ。

こっちは、いざというときにいい女ぶれるかもしれないので、あなたの脳みその桐たんすの右上の小棚に入れておいてやってもいいと思う。

 

そんなわけでDTM

もう、いくらでも想像できちゃうと思うのだが、つまりはPCで音楽作っちゃうぜっていうやつだ。

デスクトップミュージック、机の上で音楽だからね。

それを、中学生くらいから、ピコピコちゃかちゃか趣味でやっていたわけですよ。

そして、年齢を重ねたり、仕事が変わったり、環境が変わったり、やる気が失せたりするたびにやめて、気が向いたらまたはじめて、みたいなことを繰り返していた。

 

今の会社に入って8年が経った。

年齢的にも、まあ中堅。中堅でも、事務職の給料は安い。

8年かかって係長にまではなったのだが、ポストが空かず(私はそう思っている)管理職にはしてもらえない。というか、なりたくもないな。

 

自分から退職をしたことは一度もないのだが、事情により二回転職をしている。

一社目はリーマンショックの煽りを受けて新人研修中に集団解雇。二社目は、社というか学校なのだが、三年やったが根詰めすぎて倒れて、その際持病を持ってしまって、医師から休むべしとそそのかされて、次年度の採用希望を見送った。

そうして、「なにもしていない期間」が何か月があったのだが、このままではならんと思い、「なんでもいいから雇ってくれる会社」を探して今の会社の管理部に配属された。

エクセルもワードも使えなかったけど、直属の上長がめちゃくちゃスパルタンXだったので、泣きながら独学で覚えた。

それから、8年、IT使った事務仕事は、部の中で私が一番詳しいような状態になっている。

 

思い返すと「なんでもいいからなにかしなきゃ!」という気持ちが強かった8年前。あの頃の私にもう一度会うことができたなら「なんかしてなきゃ死ぬんかい……」と諭してあげたい。

 

そうだ。なにもしてなくても死にはしないのだ。

しかし、なにもしていなくても、お腹は空くし、お腹は空く。つまり、お腹が空く。

 

いまだ続くCOVID-19で、弊社も在宅勤務への移行を余儀なくされた。と、そんなこともなく、もともと国のテレワーク参画にモデル企業として参画していたので、事務職社員のテレワークへの移行はそんなに難しいものではなかった。

ただし、コロナ禍の管理部のバリバリ在宅勤務できちゃう事務職社員係長、暇なわけがない。2月半ばには不眠症が始まり、緊急事態宣言が明けたころには、ベッドから起き上がれなくなっていた。

近所の診療内科まで這っていき、「うつ状態」の診断書をもらったのがつい二週間前だ。

 

そうして、とりあえず仕事を離れて休みましょうということになった。

それでも、私に張り付いていた仕事は、多く最初の一週間は職場からヘルプアイニージュヘルプミーの電話がかかりまくっていた。

医者が「働ける状態にない」って言ってんのに「休むなら引き継ぎして」ってどういうこっちゃねん。フォルダにログインできる権限はあんたら全員が持ってるんだから好きにやったらええがな。私が作ったアクセスもマクロも使わんでもええがな、そろばんでもなんでもつかっちゃりいな。

そんな感じだから、引き継ぎのテレカンでは、もう、今にも119なんじゃないかってほどのつらさを醸し出して、「ちょっと考えればわかるじゃねえですか」感ばしばし出して、「あなた方は労務を供することが不適切な人間に労務を強いている」という状況を無理やり作って、嫌な奴になってやった。

面倒くさいことはなんでもかんでも振ってきた恨みつらみがあるもんで、このくらいの仕返しは許されるのではないかと思ったのだ。

で、テレカン終わったらhulu観てた。労働時間にカウントされてないんですこの「引き継ぎ」とかいうやつ、わかります? 直後にhulu観るくらいいいじゃないですか。

 

脱線してしまったのでDTMに戻る。

休み始めて二週間、驚くほど眠れる。

ここ10年不眠症と仲良くてしていて、2月半ばからは本当に重症で、午前中は意識ない状態で仕事していたのに。目の下のクマひどかったの、ウェントワース女子刑務所のフランキーみたくなってたのに。フランキー、好き。

 

そいでもって、寝て、寝て、テレビ観て、寝て、ウェントワース観て泣いて、寝て、ウェントワース観て、泣いて、泣いて、寝て、そんなことを繰り返しているうちに、やっと、ずっと失っていた「平常心」というものが戻ってきたような気がしたのね。

それまでは、目の奥が痛かったり、首、肩、背中が張っていたり、足が熱かったり、顔がほてっていたり、動悸がきつく感じたり、とにかく不調だった。ずっと、どこかしら不調だったのよ。

それが(なんのためにやっていたのか、誰のためにやっていたのかわからない)仕事を離れて、睡眠(過眠)に溺れて、オーストラリア産女囚ドラマにのめりこんでいるうちに、すっかり人としての形を取り戻せたような気がするの。

もうね、わたしそれまでメタモンだったね。

上司からの指示を受けてそれをうまいことできる人になりきってやりこなすやつ。

忘れてたわ、人だったわ。楽しかったら笑顔になるし、悲しかったら涙が出る。人だわー、人だった。

まあ、メタモンも泣いたり笑ったりするんだろうけどね。わたしメタモンでもなかったわ。

 

そうして二週間心のおやすみをいただいたわたし、次になにをしたかというと、プライベートPCにMIDIキーボード繋いじゃいました。

コロナセール(?)のどさくさに紛れて、70%オフでIKmultimediaの全部入り音源ソフトゲットしちゃいました。

コンデンサマイク買ったり、サンプラーソフト買ったり、DAWアップデートしたりなんかして、今月のカードの引き落とし13万ですってよ。

コロナのせいで家から出てないから、いつもより引き落とし全然少ないと思ってたのに~、使ってた~、使ってたわ~、70%オフといえども4万円だもんね。1TBといえど外付けSSDに3万円だもんね。

いやしかし後悔はしていいない。本当のわたしを取り戻すためにこれは必要な出費だったのだ!

 

本当のわたし、なにそれ、誰、知らん。

 

ここで話はやっとDTMに戻ります。

そんな、そこそこの金を支払って、しかしお得に、かっちょいい音がたくさん出るソフトを手に入れたわけです。

3万色以上の音色があなたのDTMライフを加速させる、ですって。

3万色以上、正直そんな要らねえな。

使うのなんてどうせ15種類くらいだし。

 

でもまあ、くれるもんはもらっとくよ、ということで音源ダウンロード開始。

 

で、さ、さっきも書いたけど、メインで使う音って結構決まってて、「こっちの音のほうがいいかな」とか、そんなマニアックなことわたししないのね。

ドラムとパーカスくらい。ギターの音ととか、下手しい自分で弾いたほうが早いんじゃねえかなと思うこともある。

 

だから、3万色って言われても「へえ」としか思わないの。

だのに、ダウンロードしなきゃいけないの。

わたし、三日で10GBで速度制限かかるポケットWi-Fiしか持ってないの。

 

制限、かかるに決まってんじゃん。

 

今、メインのサンプルタンクのダウンロードが終わって現時点で60GBですよ。

このあと、弦のミロスラブフィルハモニクの音源で55GBですよ。

低速~、超低速~、全然ダウンロード終わらない~

ここまでして音源を確保しておく必要あるのかってね、思っちゃうよね。

でも買ったらこれだけで4万するソフトだからね。

無駄にはしたくないよね。

たしかにいい音なのは知ってる、聴き比べて、フリーのサンプル音源とは比較にならないほどリアルな質だってのはわかってる、けど、フルオーケストラアレンジなんてやるのか? この私が? やらねえだろ、断言してもいい、絶対やらねえ。

にもかかわらず、ダウンロードを強行している。

 

これさ、積ん読だよ。

読みもしないくせに、さも高尚そうな分厚い本を、本棚に入れて眺めているような状態。

本当に使うのはフリーソフトで賄える範囲で十分なのに、勢いと格好つけで全集買っちゃったみたいな。

お前、絶対そんな本読まないだろ! みたいな。

女子大生の東野圭吾(ハードカバー)みたいな。

 

すべてを自由にこなすDTMerへの道は遠いな。

今日中に弦音源入れちゃいたいけど、終わらなそうだなー。

 

待ち遠しすぎてこんな文章書いちゃってるくらいだからなー。