遠浅の海、羊の群れ。

羊の群れは、きまって遠くの向こう岸で、べえやべえやとわなないている。

同居人のこと

同居人がまた帰ってこない。
深夜、店で事務作業をしていたら寝てしまったらしい。
思い出してみれば、昨夜も終電に間に合わず、始発で帰ってきて、シャワーだけ浴びてまた仕事へ出かけて行った。
もう5年一緒に暮らしているので、やつの職場の黒さはただ一緒に住んでいるだけでの僕でさえ把握してしまっているのだが、最近はとみにひどい。
帰れたとしても終電よりも早い電車で帰れたことはない。
いつも定時上がりの僕からすると信じられない状況なのだが、飲食業とはどこもこんなもんなんだろうか。
せっかくガリガリのやつを少しでも肥えさせようと脂っこいおかずを作って白飯を炊いて待っている僕の身にもなれというものだ。
蒸しているのが嫌だというからわざわざエアコンで「除湿」をかけて待っているというのに。
毎晩、毎晩、待っているというのに。

気持ちというのは伝わらんなあ。

違うな、そうじゃない、僕の気持ちがどうであれ、彼は働くのだ。
一生懸命、周りの人以上に、働きすぎてしまうのだ。
真面目だから。それだけのことなのだ。

そこに、誰か人の気持ちが何かしらの影響を及ぼせる余地など、はなからないのだ。
少しくらい、ほんの少しくらいは、あってほしいとも思うのだが。
そんなのは傲慢であると感ぜられるほどに、やつと僕との心の距離は境目を隔てているのだろう。

そんなこんなで寝る時間だ。